発想から実装へ: 霧を貫くカエルのランタン

開発工程を覆い隠す霧を貫き、ファンに好評のランタンの秘密を解き明かします!

「発想から実装へ」シリーズは、プレイヤーの皆さんの想像力をとらえてやまないランタンと深い縁があります。実際、シリーズの初回でも元祖ランタン MVP の最強のオーブをご紹介しました。装飾品のデザインを扱う本シリーズはその後、パンク ファッション略奪パスの逸品船紋章、海賊の忠実なる仲間をご紹介してきました。

こうした装飾品の誕生の秘密も楽しんでいただけたと思いますが、シーズン 11 の今回は満を持して、やはりランタンの愉快な魅力には抗えないことを再確認していきたいと思います。そう、今回秘密を解き明かしていくのは、我々の心をとらえて離さない、丸くてゲコゲコと鳴く「霧を貫くカエルのランタン」です。きっと、とらえた心を沼のどこかに隠しているんでしょう。結局のところ、ランタンはランタンでしかないのに。びっくりですよね?

この丸々としたカエルの愛らしさ、誕生の秘密をぜひ知りたいですよね? そこで、開発に携わった方々にお話を伺い、記事としてまとめました。どうぞ、お楽しみください!


コンセプト

シーズン 11 で勲功を集めることで得られるほかの多くのアイテムと異なり、霧を貫くカエルのランタンはいろいろな装飾品をまとめたセットの中の一点ではありません。ひとつのテーマに沿った一連のアイテム群ではない単独のアイテムでも、デザイン担当チームは想像力の翼を広げてすばらしい作品を生み出してくれるものです。シニア コンセプト アーティストの Tom Mahon 曰く、

「一般論として、一点物のアイテムの方がずっとやりやすいと思います。デザイン上のテーマや独特な要素を、その 1 アイテムに適用するだけで済みますから。一連のセットにイカしたアイデアを採用しようとすれば、あらゆる種類のアイテムにそうしたテーマや要素を適用したうえで、チグハグにならないよう統一感も出さねばなりませんから」

「もちろん、何度か挑戦していく中で徐々にそうした難題にも慣れていきました。今では、新しいテーマを提案する際にはどの要素を共通のものとするのか、どの要素は独自のものとするのかが感覚的にわかっています。例えば、音楽をテーマにしたセットを作るとすれば、いろいろな種類の楽器をデザインに取り込む形をとり、全部をドラムで統一するなんてことはしません。そうすることで、雰囲気に変化を加えつつ、戦いの道具らしくすることができるんです (ただの例だけど悪くないアイデアかも!)」

「素材や色彩については、セット内で可能な限り揃えねばなりません。モチーフとかシンボルについても、ある程度の制約を設けるのはいいことだと思います。統一感を出すために、露骨なロゴをあちこちにつけるような手法には頼りたくないんです。セットに統一感を出すには、ある一人の船乗りや職人が作ったとか、同じ場所から来たとか、各アイテムに共通の背景を持たせるようにすべきだと思います。魅力的な見た目でありつつ、単体でもおもしろい。しかも、それがより広い文脈できちんと筋が通るようにする必要があるんです」

シーズン 11 には、勲功報酬を含めて単独型のアイテムが 3 つ登場しました。レベル 51 でマスケット銃兵の狙撃銃、レベル 70 でみんな大好きカエルのランタン、そしてレベル 96 で縞模様の監視人の帽子です。私たちはどれかひとつをお気に入りとして選んだりしませんし、どのアイテムもそれぞれの魅力があるのは確かですが、カエルのランタンが単独型の装飾品としては前例がないほどプレイヤーの関心を集めたのは間違いないでしょう。

それでは、このシンプルながらもおかしみの尽きないカエルはどのように誕生したのでしょう?どんなデザインが、このランタンをこれほど魅力的にしているのでしょう?この点について、Tom は次のように語っています。

「今はもうチームから離れてしまったアーティストがデザインした作品ですが (Artur Zima に心からの感謝を!)、そもそも海賊というのは探検や大自然との関係が深いものであり、動物をインスピレーションのもとにするのはよくあることなんです」

「このランタンは、数年前に装飾品のアイデア出しの会でデザインしたものなんです。アーティストたちが全員集合して斬新な装飾品のアイデアを出そうという集まりでしたね。特定の期日や目標に向けての会議ではなく、とにかくアイデアを出してブレストをする感じでした。会が終わって完成した資料をディレクターとプロデューサーに見せ、コンセプトをいくつか選びました。単独の装飾品として採用する方がうまくいくアイデアもあれば、すべての種類が揃ったセットとして実装する方がいいアイデアもあります」

「カエルのランタンに関しては、過去のアイデア出しでおもしろい案がないか振り返ってみるように何度か言われる中で、単独型アイテムの案として抜きんでていたのが目に留まったんです。でも、ここまで人気が出るとは誰一人思っていなかったでしょうね!」

このランタンは人気が非常に高いため、ゲーム内での入手方法を知りたいという人もいるでしょう。獲得のために努力するプレイヤーのやる気を掻き立てるため、人気が高く精巧な装飾品ほど獲得の難易度が高い褒賞だったり価格が高かったりするものです。それではアート チームは、今練っているデザインが最終的にどのような報酬として使われるかを制作過程で意識しているのでしょうか? それとも、そういった決定は後からなされるのでしょうか?Tom によれば、報酬の割り当てというのはまったく別の工程である場合が多いようです。

「あるアイテムがどこで使われるかを知っている場合もあります。特定の指示などがないアイデア出しで生まれたコンセプトもありますので、最初の段階ではとにかく独特で魅力的なものを生み出すようにしています。その後、そうしたコンセプトが一番適しているのはどこかを決めるんです。時には、コンセプト段階に立ち戻ってより適したものに変更する場合もあります。しかし、アイテムの実装はかなりの高頻度で行われるため、そういったデザインについてはコンセプト チームにあらかじめ指示が出ます。シーズン勲功の装飾品セットに関する指示は、そのシーズンで起きていることに関連していたり、特定のイベントを完了したことに対する報酬だったりします」

Sea of Thieves の最初のころは、デザインについてはとくに明確な順位を意識してはいませんでした。だから、とにかくピカピカで金キラのやつほど、いいアイテムという感じだったんです。でも、このゲームは自己表現がなにより重要な作品ですから。イカしたビルジ・ラットのシャツを着こなしているかどうかで自分の価値が決まる、といった思いを抱いてほしくはありませんでした。とはいえ、装飾品を通じて誇りや達成感を味わってほしいとも思っていました。特に、貿易会社との関係を深めたり、伝説の海賊になったりした際にはその点を重視したかったんです」

「海賊商店の装飾品については、遠路はるばる《海賊の海》まで来てくれた海賊たちに報いるためのものであり、多少突飛であっても構わないと考えていました。だから、海賊商店のセットはゲーム内の物語と結びついていないものが多いんです」

制作

コレクターズ ペットの緻密なアニメーションや、シップ セットを一式揃えるために必要なモデルの膨大さ多様さと比べると、ランタンのモデリングやプログラミングはまだシンプルな工程に違いないと思うでしょう。シニア レベル アーティストの Joachim Coppens も次のように述べています。

「ランタンは、ゲームへの実装がしやすい小道具の一つです。モデリングの観点からいえば、すでにひな型となるモデルが存在するため、プレイヤーの手がどこに置かれるのかやランタン全体がどのくらいの大きさになるのか、といった点は明確です。そうしたすでに決まっている点を基準として守り、プレイヤーの手とランタンが重なってしまっていないかや、揺れるアニメーションのシェーダーがきちんと機能するかなどを確認するんです」

「ゲーム内にランタンを実装したら、どこから光が出るのかを手動で調整するんです (下の画像で "SPOTLIGHT__Socket" と表示されている部分)」

とはいえ、ランタンに命を吹き込むのが簡単な作業だということではありません。ランタンは光源や運命の火の容器として機能するため、エフェクトの調整は一筋縄ではいかないこともあるのです。幸い、ランタンを扱ってきた長年の経験がある開発チームにとって、こんな強烈なカエルでもうろたえたりすることはありませんでした。Joachim は次のように説明してくれました。

「運命の火に関する議論は、いろいろなランタンでかなり行われました。コンセプト チームから素晴らしいデザインが出ても、それがゲームのランタンの仕様とうまく合わないという場合もあります。色が明確に見て取れないといけませんから」

「アイテムの開発に当たっては、常にケース バイ ケースで臨んでいます。そのアイテムが一番カッコいい見た目で、使用感も一番よくなるようにゲームプレイとビジュアルのバランスをとるんです。場合によってはそのランタン用に新たな技術を開発して限界を押し広げ、それ以降のデザインでそれを活用するということもあります。私の記憶違いでなければ、本作で初のランタンはむき出しの火をつけられる仕様を目指していませんでした。途中からそうした仕様にすることが決まり、一度それを実装してしまえばそれ以降は簡単に使える技術になったんです」

開発チームがランタンの限界を押し広げて誕生したのが、小さな光る虫が顔の周りを飛び回るデザインです。かわいらしいひと工夫と感じるかもしれませんが、テクニカル アーティストの Emmett Green によればこれをきちんと実装するのはかなり入念な作業が必要だったようです。

「カエルのランタンにホタルのエフェクトを加えるのは、テクニカル アートのチームにとって挑みがいのあるチャレンジでしたよ!パフォーマンス面での制限から、パーティクルを追加することはできなかったんです。だから、ビルボード シェーダーつきのものを代わりに作るのが最近の個人的なチャレンジになっています」

「幸い、すでに強気な迷宮略奪者の船で燃え盛る炎から舞い散る見た目だけの燃えさしを作った経験があったため、素材を改良してホタルのパラパラ漫画風アニメーションを作る際に流用しました。そうした改良には、動く角度の変更、ランタンに火を入れている場合と消している場合での適切な明るさの見定め、運命の火での色の変更の追加などがありました。内部エフェクトに関して言えば、シーズン 4 のホタル ランタン向けに以前作っていた素材を再利用しました」

「もちろん、こうした調整をしても新たな問題は出てきました。ランタンを持ち上げると、周囲のホタルも上に向かって動いてしまったんです。そこで、ホタルがランタンの高さに追随しているのか、プレイヤーの背丈に追随しているのかができるだけわからないように慎重にバランスを調整しました。プレイヤーが離れていったときにホタルくんたちが消えてしまわないように独自の LOD ステージまで作って分離し、LOD が急激に変化してすぐに消えてしまうのを防いだほどです」

幸い、Emmett はこのチャレンジを苦だとは感じなかったそうです。「なんといっても、開発に取り組むのも楽しい素晴らしいランタンでしたから。ひとつ前のものに負けないくらい人気を博してくれて、とてもうれしいです!」

反響

公開に先んじて霧を貫くカエルのランタンのコンセプト アートがスタジオ内で回覧された際、コミュニティ担当チームはこのアイテムがかなり人気を博すだろうことがある程度想像できていました。カエルのランタンがシーズン 11 で実装されると、世界中のプレイヤーたちは一目で魅了され、この強烈な両生類を手に入れようと勲功上げに挑んでくれました。

Twitter には、spikee_j による「カエル球ゲット!」や、夢を実現させた PostOfSouls による「ついにカエル球が手に入った」などの喜びのツイートがあふれました。当時のコミュニティの熱狂ぶりを伝えるツイートとして、最後に HeSlashThem による「カエル球のランタンを手に入れたので、当然の行いとして投稿する」という落ち着き払ったカエル自慢を紹介しておきます。いいね!

このランタンによる盛り上がりは、単なるゲーム内での騒ぎには留まりませんでした。コミュニティの常連である Hull LariashZookie などによるアートの投稿、ChloeSaurasColourMeFunSwordLordStu などによる実世界での作品、CheeckiBreecki が投稿したようなネット ミーム、果てはこのかわいらしいランタン専門のグループを結成するという宣言 (Nomezilla がその発端) まで飛び出しました。こうした動きを少し見るだけでも、当時の熱狂ぶりがお分かりいただけるでしょう。

カエル球の強烈な魅力には、私たちのコミュニティ チーム自身が魅了されてしまうほどでした。「Sea of Thieves」公式 SNS アカウントをフォローしてくださっている方であればきっとご存じだと思いますが、シーズン 11 の公開時にはカエル関連のお祭り騒ぎが大量に投稿されました。カエルをテーマにしたコミュニティ ハブの更新まで行い、カエルを扱ったアートの数々を称えもしました。それに... これもありましたね。まあ、これについては言わぬが花でしょう。これがきっかけとなってより斬新なファン アートが生まれたりもしてはいますが。

カエル球旋風が巻き起こったのは SNS 上だけではありません。プレイヤーの統計データからも、小さなカエルくんの人気のほどを知ることができます。3 月中旬の時点で 200,000 人超のプレイヤーのうち 25% 近くが、過去 30 日の間にこのランタンをアンロックして装備していました。使用可能なランタンの多さを考えれば、圧倒的な数字だといえるでしょう。

こうして、一大ブームを巻き起こした霧を貫くカエルのランタンは世に出たのでした。まさか、荒削りの石と木でできたランタン一つが、ここまで海賊たちの想像力を掻き立てるとは、驚きですね。ここまでお読みいただいて、ご自身でカエルのお友達を手に入れたいと思った読者さん、やるべきことはシーズン 11 が終わる前に勲功レベル 70 に到達する、それだけです。シーズン 11 が終わってしまえば、次はいつ会えるやら...

おや、幸いプロデューサーの Louise Roberts はその答えを知っているようです。

「このランタンは、シーズン 11 以降に帰ってきます!現時点で 7 シーズンほど空いてしまっていますが、シーズンの進行状況の装飾品は順次循環させる予定です。復活したら、代金はダブロンでの支払いとなるでしょう」

さて、今回の「発想から実装へ」もそろそろ終わりが近づいてきました。名声上げに余念のないプレイヤー向けの貿易会社の衣装など、シーズン 11 も終了までに素晴らしい報酬がたくさん用意されています。今後の報酬の予定についてもっと詳しく知りたい方は、シーズン 11 コンテンツ アップデートの動画をご参照ください!

また、愛すべきカエル球について (もちろん、それ以外のシーズン 11 のことでも構いません) の皆さんのご意見もぜひお寄せください。公式の SNS アカウントなどは以下の通りです。TwitterFacebookInstagramYouTubeTwitchTikTok、公式フォーラムDiscord サーバー。「Sea of Thieves」の装飾品が誕生するまでの舞台裏をもっと知りたいという方は、ニュースのページから本シリーズの過去の記事をぜひご覧ください。

さて、正気を失う前にカエルのことばかり考えるのをやめて、そろそろ海に出るとしましょう!シーズン 11 の報酬が手に入るのはあと数週間だけですし、例のランタンだって勝手にアンロックされたりはしませんから...